氷川通信

狛犬~邪気を祓い、神社を守る石像~

参道の両脇に置かれている一対の狛犬(こまいぬ)は、神社の守護や魔除けといった役割を果たす獅子像のことです。

 

日本へは朝鮮半島の高麗(こうらい)経由で伝えられたとされます。伝来当時の日本人は、獅子を実際に見たことがなく、異様な姿をした犬だと考えました。そのため高麗の犬ということで「高麗犬(こまいぬ)」と呼ばれ、やがて「狛犬」と称されるようになったといわれます。魔除けとして置かれたことから、「拒魔(こま)犬」を語源とする説もあります。

伝来当初、狛犬は宮中の御簾(みす)や屏風、門扉などを止めるために使う置物として用いられたようです。その後、平安時代後期から鎌倉時代にかけて、神社の拝殿の床上に置かれるようになりました。さらに時代が下るにつれて、狛犬の置き場所は、拝殿の前に移り、やがて鳥居のそばに置かれるようになったと考えられています。

 

狛犬には特に定められている形式はありませんが、一般的に阿吽(あうん)の姿で表されていることが多いです。向かって右側に置かれるのが口を開いた「阿」型で、左側に置かれるのが口を閉じた「吽」型です。

 

阿吽とは、物事始めと終わりを表したもので、一対で森羅万象が完結するといわれております。これは仏教の仁王像が阿吽型になっているのと同様です。ただ、狛犬の場合は厳密に定められているのではなく、両方とも口を開けているもの、はたまた閉じているものもあります。

 

赤坂氷川神社の境内には7対もの狛犬があり、赤坂氷川神社はまさに狛犬の宝庫と呼ぶことができます。それらの多くが祭礼や式典に合わせて奉納されたものであり、当社が地域内の深い信仰を集めてきたことを物語っています。

 

特に、中門両脇の狛犬は、現在地に御社殿が建立されるより前の延宝3年(1675年)6月建立の銘があり、都内神社に現存する石造狛犬の中では最も古いものとされます。