氷川通信

眷属(けんぞく)~稲荷神社の狐の由来~

神社によっては狛犬を置かず、代わりに別の動物をおいているところがあります。赤坂氷川神社境内にある四合稲荷(しあわせいなり)には、狛犬ではなく狐像が置かれています。この狐は神に仕える動物であると考えられており、そのような動物を総称して「眷属(けんぞく)と呼びます。

 

もともと眷属とは、仏教用語で本来は仏様や菩薩に従う神様のことを指します。眷属が神社に置かれているのは、日本の神様がその姿を人間の前には現さないためです。そこで、神様のご意志を神様に代わって伝えるために、眷属が人々のもとへ派遣されたのです。

 

それらは神話に由来するものもあれば、神社近くの土地に多く生息しているからという理由で指定されたものもあります。眷属は狐の他、奈良県の春日大社の鹿、京都府の北野天満宮の牛、滋賀県の日吉大社の猿、和歌山県の熊野大社の烏など、神社によって実に様々です。

埼玉県の三峯神社、東京都の御嶽神社の眷属は狼です。犬の祖先で「神犬」とされたことから「お犬さま」と呼ばれ親しまれています。日本狼はすでに絶滅してしまいましたが、今も神様のお使いとして信仰の中に生きております。

 

稲荷神社の使いが狐であるのは、田の神様への信仰と深く関わっています。稲の穂が実るころになると、山から狐が降りてきて、人里で目撃されることが多かったようです。豊穣をもたらす山の神が里へ降りてくると、田の神である稲荷神になると信じられていたことから、狐は稲荷神の使いであると考えられるようになりました。

 

あるいは、稲荷神社の御祭神・宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は、御饌津神(みけつかみ)とも呼ばれおり、この御饌津神の名を「御狐神」と書き間違えたことから、稲荷神社と狐が結びついたという説もあります。